テランブログ

日常や思い出を探検して、見たこと、感じたこと、不思議に思ったことなどを書いていきます。

フェニックス、不死鳥のように

フェニックス、不死鳥のように


Soo doov' dan desen Phenix t'onser schade

In 't midden, en in't beste van zyn swier,

Maar weer gelukkig rees’ er uyt zyn vier

VERMEER, die meesterlyck betrad zyn pade.

 

 

このように 不死鳥は 消える 我々の損失

輝き、最良の時にあったなかで

しかし 幸いにも 彼の炎から 舞いあがる

その名はフェルメール 見事に彼の道を進む

 

 

Dirck Evertsz van Bleyswijck, Beschryvinge der stadt Delft, Delft, 1667, p.854. 

 

【フェルメール《デルフトの眺望》】 彼は世界を構築したんだ!

なんだこれは! 街だ! デルフトだ!

マウリッツハイス美術館に突然デルフトが現れたぞ!

ここはハーグなのになんてことだ!

 

 【フェルメール《デルフトの眺望》】 彼は世界を構築したんだ!

 

これは風景画ではあるけれども、17世紀の街の一部をその眺めから切り出してきている。

そんな感触だ。

 

オランダの画家の絵は、オランダの肖像だと言われる。

確かにそのようでもあるが、これはもはや絵ではない。

 

確かにこれは風景画ではあるが、フェルメールが手がけたのは「デルフト」なのだ。

 

まず上空近くに掛かる重たそうな雲。これは雨雲のようだが、向こうに見える他の雲の状態を考えると、この絵が雲に突き刺さったかのようにも見える。さらに言えば、下側には人々が小さく並ぶ岸がある。つまりは雲と岸が絵の中のもう一つの額縁になっているわけだ。これによって風景というよりは、まさに中央のデルフトが切り取られたようになり、街の一部が浮かびあがってくるのだ。絵画自体の形状がやや正方形に近づいているにも関わらず、横長の風景を感じるのはこのためだ。

 

雲に遮られていない太陽の光は街の向こう側を照らして、尖塔が見える新教会のあたりが明るくなっているのが分かるだろう。塔の先が今にも雲に触れそうだ。

 

この絵にはもう一つデルフトがある。みなさんお気づきだと思うが、河の水面に映った影のデルフトだ。見事に対称を描いて建物がかたどられているだろう。

驚くのは右手にある水門だが、岸が手前に退いている効果もあいまって、この一部分は画面からこちらに飛び出てきているようなのだ。これは物質ではない。もろく崩れ去るイメージの集合体なのだ。

 

この絵の前では誰しも驚きを隠せない…… そう、私やあのプルーストのように。

 

フェルメールはここにデルフトを具現化させた!

 

彼は世界を構築したんだ!

 

 

 

作品:ヨハネス・フェルメール 《デルフトの眺望》 1660-61年頃 マウリッツハイス美術館

【フェルメール《真珠の耳飾りの少女》】 今、目があいました?

こんにちは。

今見てました? 目があったように思いましたけど。

いいんですよ、こちら側に興味があるんでしょ? わたしもそちらが気になるので時々見てるんです。

ふとした時に振り向くので、ちょっと油断した感じになっちゃって。

わたし… 口が開いてることがよくあるんです。

 

 ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 マウリッツハイス美術館

 

え? こちら暗い?

いえいえ。とても明るいですよ。よく光があたって眩しいくらい。

わたしの肌、見えてますか。白いでしょ。ちゃんとお手入れもしてるんですけどね。よく言われますけど、わたしの瞳と唇と耳飾りが輝いてませんか?

この真珠の耳飾りはお気に入りなんです。びっくりするくらい大きいでしょう。ターバンの青も好きでお洋服と合わせてるけど、光があたるとこんなに澄んだ色になるんですよ。当時は船で世界がつながっていた時代ですから、目新しいものが身近にあったんじゃないですかね。

 

こちらが暗く見えてるのは、そもそも習作だからなんて言われてますけど、ここにはそちらからの角度からは見えない世界がひろがっているんですよ。不思議でしょう?

フェルメールさんにとってわたしは、少女の抽象的な存在というか… そんなわたしが特徴のあるターバンを巻いて、大きな真珠の耳飾りをつけて。

なんだかギャップがあって面白くないですか?

 

なんとなくこの白い襟が目立っていると思うんです。これがなかったら全体がもっと暗くなってると思うんですよね。ちょうどわたしの真ん中あたりにありますし、印象を左右するポイントになってるんじゃないかなって。

 

わたしのこと、モナ・リザさんみたいって言う人がいますけど、それは目が合うからですか? モナ・リザさんにぜひ会ってみたいんです。好奇心旺盛な方なんでしょうか?

わたしたちが見つめあったら、きっと面白いお話ができるような気がします。

 

ふふ…… わたし、フェルメールさんをよく知っているんですよ。毎日のように会っていたから。目の前のことにすごい時間をかけて注力する人だから、現代に残った絵の中によく似てるものを見つけられるかもしれないですね。

 

いつも一瞬ですよ、お会いするときは。

どなたもそうなんです。だから毎日が楽しみなんですよ。

 

遊びに来てくださいね。

わたしがいないときはここは真っ暗かもしれないけど、ときどき見に来てますから。

 

今…… 目は合ってますか?

 

 

 

作品:ヨハネス・フェルメール真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 マウリッツハイス美術館